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原産地証明の検証厳格化

インド税関で通関トラブル多発

新ルール「CAROTAR2020」適用でインド税関が原産地確認として情報の提出を要求し通関が滞るトラブルが多発。ルール通りFormIを提出しても回答までに日数を要する為、やむを得ず特恵関税を適用せずに通関するケースもある。
現状では以前のように数日で通関できる確実な方法が明確になっていないので各企業がそれぞれの事例を情報交換しながら解決策を模索中。
FTA戦略的活用研究会20.11.13.pdf

インド政府、9月21日から原産地証明に係わる新ルール開始

インド財務省は8月21日、原産地証明に係る新たなルール「CAROTAR 2020:the Customs(Administration of Rules of Origin under the Trade Agreements) Rules, 2020」を9月21日から適用する旨の通達を出しました。
それによると2/1の通達で輸入者が十分な情報を持たなくてはいけないという条文の”情報”について今回具体的なガイドラインやフォーマットを提示してきました。
まともに従うと輸入者に部品構成やコストに関わる情報を出さなくてはいけないような文言があり、輸入者がこの通達を利用して仕入先(日本企業)の情報を引き出そうと考えることもありえます。それについて9/25のFTA戦略的活用研究会にてコメントさせていただいたのでその際の資料を添付します。
具体的にインド側から要求された事例があればお聞かせください。
2020.9.25 FTA戦略的活用研究会での資料(一部追削あり)を添付します。スライドショーで見てください。
FTA戦略的活用研究会20.09.25映写用.pptx

2020.6.19 FTA戦略的活用研究会の動画のURLを掲載します。

https://youtu.be/67KAjlzLpuw
2020.6.19 FTA戦略的活用研究会のプレゼン資料添付しました。
FTA戦略的活用研究会20.06.19本編.pdf

インドの輸入者よりコスト情報の開示を要求される恐れあり

2020年度予算案にて原産地証明の検証厳格化の方針が示された

2月1日発表の2020年度予算案に、現行は輸入者が原産地証明を提出するだけだったものが、今後は原産品であることを証明する書類や情報を輸入者に追加で求められる場合があるという条項が関税法に加えられると発表がありました。
JETROホームページ
また、経産省からも発表が出ています。こちらは品名の記載に注意とも書かれています。
経産省ホームページ

付加価値基準の根拠となる計算表の提出が必要になる?

インドのFTAの多くは関税分類変更基準(CTC)と付加価値基準(VA)の両方が必要です。輸入者に求められる原産品であることを証明する書類や情報について具体的な書類名などがないため、今回の変更で原産品であることを証明する書類や情報として輸入者から輸出者(生産者)に対比表と計算表を求められる可能性があります。
輸入者が輸出者(生産者)のグループ会社でも、原価を開示することになる計算表を渡すこと=コスト情報を開示することは到底容認できません。(同じ社内でも他部署に見せないですよね)
計算表の提出を拒否した場合、FTAが使えないから輸入者が払うべき関税を肩代わりするよう要求されることが予想されます。

原産地証明書じゃダメなの?

日本インド包括的経済連携協定(日インドCEPA)には、
” EPAにおける貿易において、日本から輸出される産品が、EPAに基づく原産資格を満たしていることを証明すると、相手国税関でEPA税率(通常の関税率よりも低い関税率)の適用を受けることができます。”(日本商工会議所ホームページより)
となっているので、原産地証明書だけでは輸入者の責務を果たしたことにならないというのは、商工会議所が責任を持って発行してくれる原産地証明書は信用ならないということなのでしょうか。
税関から輸入者への照会は一般的に国内法令に基づいた税関の権限ではありますので適正な申告内容か疑わしい時は聞いてもいいことになっているようです。偽造原産地証明書かもしれないと疑われるような輸入者がけっこういるのでしょうね。

インド税関から日本の経産省(商工会議所)に問い合わせるのが本来のルート

日インドCEPAの協定文の「附属書三 運用上の証明手続き」の六節の1において、「輸入締約国の税関当局は、関税上の特恵待遇を与えられて輸出締約国から輸入される産品が当該輸出締約国の原産品であるか否かを決定するため、当該輸出締約国の権限のある政府当局に対し、当該産品が当該輸出締約国の原産品であるか否かに関する情報を原産地証明書に基づいて要請することができる。」とあります。
輸出側として輸入者に提供できない情報があることで輸入通関時に是否の判断ができない場合は通関後に検認手続きによる照会を行うことになっていますので、輸入者に出したくないことを聞いてくるようならば、あとは検認でお願いと言えばいいです。

この条項追加の目的は?

輸入して欲しくない相手に発動してくるだろうことを考えるとインドにとって一番の入超国の中国がメインのターゲットでしょう。迂回輸出で原産地の不正が見られるのも今回の変更の理由のようです。インドの主な輸入国(金額ベース)は、中国・米国・UAE・サウジアラビア・スイスの順で日本は14位です。(2018年)
日本は14位だから見逃してもらえるかというと、米国とはFTAがなく、アラブ諸国の原油やスイスの金(と思われる)は原産地にケチをつけようがないので、日本も優先順位がそんなに低くはないかもしれません。
目的から考えると、生産している工場の住所を伝えればいいのではないかと思います。いまどきグーグルマップの衛星写真を見れば工場か倉庫かの区別ぐらいつくでしょう。我々は堂々と疑うなら現地を見に行ってくださいと言えばいいです。

いつから適用なのか

予算案の適用は2020年4月1日からですが、「・・・場合がある」という文言ですので、いきなり4月1日分から対比表と計算表出せと言わないと思います。この状況でわざわざ輸入者を呼び出して濃厚接触してまで書類を見たくはないでしょう。しかし、少し落ち着いて中国で効果が出たりすると日本もやってみようとなるでいつまでも安心していられることはありません。

輸入者から資料や情報の提供を要求されたら・・・

先に述べたように輸入者には追加の情報を準備しておくようにとしか書いていないのでまず思い着くのは対比表・計算表を用意することです。しかしここで対比表や計算表を輸入者に出してしまうとインド税関に対し悪しき前例を作ってしまいます。(A社は書類を出してきたのに、どうしてB社は出せないんだ・・・と)
税関から対比表・計算表を出すように言われたのか?具体的にどの書類を出せと言ってきたのか?と聞き返してください。
ただし、何も情報を出さないと輸入者もインド税関から何も対応していないように思われて輸入者の立場がなくなるというならば、生産地の住所とか原産地証明の基準として付加価値基準のVA35%とか関税分類変更基準のCTH4桁を適用していますなどと差しさわりのないことを返答しておきましょう。
輸出側として輸入者に提供できない情報があることで輸入通関時に是否の判断ができない場合は通関後に検認手続きによる照会を行うことになっています。
もし輸入者から計算表などの提供できない情報の要請があれば、輸出者としては輸入者にこれら情報は提供できないのでEPAに規定された検認手続きを通して照会してほしいと輸入者に回答してください。
その上で、検認もせずにEPA税率を否認するような動きがあれば、下記の窓口に相談してください。

窓口は(今はコロナで大変なのでなるべくメールにしてください)

JETRO海外調査部大洋州課 古屋様
TEL:03-3582-5179 Mail:ORF@jetro.go.jp
にお願いします。(どんどん相談して状況を理解してもらいましょう)
経産省原産地証明室 菊池様 gensanti-syoumei@meti.go.jp

そもそもこの条項は協定違反では

日インドCEPAで、原産地証明書があれば特恵税率を適用するとなっていて、検認は経産省に問い合わせるとなっているので、私は今回のインド関税法の条項追加は協定違反になると思いますが、輸入者に聞くことは認められていて、輸出者が出したくない項目は検認手続きで照会するようにとかわすことも可能です。
ただ、輸入者が必要な情報をなんらかの理由で提供できない場合、職員は更なる検証を行ったり、検証を保留し一時的に特恵関税率の適用を停止したりすることができる。とあるので、もし計算表を輸入者に出さないと特恵関税率の適用を停止するとか通関しないぞとか言われる恐れがあります。そこは協定違反になると思われるのですぐに上記窓口まで。
ただ、JETROもしくは経産省に相談してもすぐに解決できるかどうかわかりません。その間、通関できずに港に留め置くこともできないので、一旦関税を払って通関してから異議申し立てをして遡及精算をしてもらうことができるかどうか。
インドなのでなかなか協議のテーブルに乗ってこないでそのうち担当者が変わってうやむやにされないように気をつけなければいけません。
 

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ちなみに実は対比表・計算表が管理できていなくて心配という方はここをクリック→F-Box